生きるための日本史

日本社会は人間ではなく〈立場〉でできている。
立場を離れ、「私」と「世界」を直接に結び付ける画期的歴史論。

・「タテ社会」や「空気」を超える新たなキーワード=「立場主義」。
これは江戸時代までの「家主義」に代わり、明治期の徴兵制、満州国と第二次大戦、そしてバブル経済によって育てられた論理である。
・自分と他者の立場さえ守れば共存して生きられる国「日本立場主義人民共和国」に生きる私たち。
社会と人間を消耗させ、健全な思考を見失わせるこの価値観はどのように形成され、どんな弊害をもたらしているのか。
・立場主義は原発事故とコロナ禍によって終焉に向かいつつある。今こそ必要なのは、古くからの「無縁」の世界への回帰。
・著者の至った境地 は「〈立場〉を離れ、馬と暮らそう」!
ひとりひとりが、直接に世界と結びついた「私の世界史」の中を生きるために。

※動画講義つき。内容の解説や執筆の背景、読み方のヒントなどを著者自ら紹介します。(URLは本書内に記載)

出版社からのコメント

産経新聞(2021年5月16日)に、コラムニスト上原隆氏による書評が掲載されました(以下抄録)。
『安冨歩はうさんくさい。うさんくさいはホメ言葉である。そう感じるのは慣れ親しんだ世界の外にいる人だからで、日本のように均質化した社会にとって貴重なのだ』
『「私は、なぜ、いま、ここで、こんなふうに、生きているのか」を問う歴史学の話は、著者の「私」を交差点にして四方八方へ広がっていく。読者は行き先が見えないままついていき、最後に思考の自在さに思い至るのである』

安冨 歩

やすとみ あゆみ

東京大学東洋文化研究所教授

東京大学東洋文化研究所教授。1963年生まれ。京都大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行勤務。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、現職。著書に『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『生きる技法』(青灯社)、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』(明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)などがある。『「満洲国」の金融』(創文社)で第40回日経・経済図書文化賞受賞。