説明
安冨 歩
やすとみ あゆみ
東京大学東洋文化研究所教授
1963年生まれ。京都大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行勤務。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、現職。著書に『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『生きる技法』(青灯社)、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』(明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)などがある。『満州国の金融』(創文社)で第40回日経・経済図書文化賞受賞。
E.F. –
昨年から清水さまがしきりに、家計簿の重要性を説いていたので、今までつけていた家計簿を眺めながら、視聴いたしました。
手短な感想を云わせていただきますと、非常に役に立つ動画で、購入した価値があったと思いました。
一応、私も簿記会計に関する本は何冊か、目を通したことがあるのですが、細かいトピックに分かれており、消化不良感があったのですが、今回、安富さんの講義動画で、全体像がみえてきました。
以前、清水さまが、日本には色々な落とし穴がある、とおっしゃっていましたが、その意味が少しだけわかったように思えます。
試しに、動画を視聴後に、地元のある会社の損益計算書と貸借対照表をみたいと、検索をかけてみたのですが、十年近く前のものしかみつからず、さらに詳しく調べたところ、どうやらフランチャイズ契約の会社だとわかり、だから、直近の決算書がないのだとわかりました。
手持ちの資産がいくらあるのか、把握するのは本当に大切で、それなしに物事を判断するのは危険だな、と自戒を込めて思いました。
パーティページ (承認) –
少なくとも、ここまで簿記会計をそもそもからわかりやすく説明して、なおかつ簿記会計に表記された価値が幻想であるかと言う事を念押しする解説というのはこの動画以外にないのではないだろうか。簿記会計やバランスシートを初心者にもわかりやすく解説本ですら、この動画で説明されているそもそもの部分を省いて説明しているのがほとんどなので、正直言って市場に出回っている初心者向けの解説本は初心者向けの皮をかぶった上級者向けの本であるということが唯々多いと私は感じる。
この動画で学んだ骨組みを基本として、私も少しずつ簿記会計やバランスシートに関する本を読んで勉強してはいるが、会計を学べば学ぶほど思うことはというと「こんなものは所詮イカサマだな」という呆れた感情と、こんなものを基準とした価値のせいで多くの人が不幸になったり具合が悪くなっているという悲しみや痛みである。
例えばだが、法人格が払わなければならない負債(借金、法的債務)を払うためには、もちろん会社の事業を継続的に運営する要である資産に持続勢があるかどうかが必要になってくる。要は会社が潰れたりでもしたら、その会社からお金が支払われる予定の人たちは困ってしまうというただそれだけのことである。
ただこの理屈が一つの要因となって、あの水俣病を起こした会社が今でも存続しているという事実に私は非常に驚く。問題を起こした会社が、その問題のせいで作った借金(賠償金)を払うために、むしろ会社が持続しているということは普通では考えられないことだからだ。
簿記会計を基準とした、価値基準で起こったおかしな事例は他にもあると私は思う。例えばあの80年代後半のころに起きた日本の不動産バブルはどうだろうか?あれだって本来は会計上に記載される固定資産をどうやって査定するかという問題で起こった一つのヒューマンエラーだ。そもそも土地などという流動性が低い資産は、結局のところは誰かがこの値段でその土地を買いたいと申し出て、最終的に口座に現金が振り込まれて、はじめてその土地の価値が正確に決まると言っても過言ではない。ただ本来、土地というのはそういう性質性があるから、土地を担保に融資をする銀行側だって、厳しく担保になっている土地や建物をチェックするというのが本来の銀行業の業務なわけだ。
ただそんなことを考えて働いてる銀行マンがどれだけいるかどうかは、…詳しくは万冊ショップに販売されている「バブル崩壊は終わってない」を拝見すれば、その実情はよくわかると思う。
他にも国から予算を貰っている公団や行政法人、それに関わるファミリー企業が、一人勝手に営利活動を自己目的化としたことも、これも会計が引き起こした大問題の一つでもあると思うし、なぜ日本は賃上げを拒否して非正規雇用を増やしてきたかと言う事も会計が引き起こした原因でもあると思うし、なぜ日本の大企業はある程度の円安を良しとしてきたかということも会計が原因でもあると思うし、なぜ学校の給食がここまで貧相になってしまったかという問題は会計にあると思うし、なぜ利権側に寄り添う企業や団体が政治家のパー券を買うかどうかも会計が原因であると思うし、なぜ日銀がバランスシートがここまで膨張してしまったかというのも会計が原因であると思うし
いっちゃわるいが、なんでもかんでも会計が原因であるといっても過言ではないし。それだけ簿記会計というのが私たちの暮らしている社会にどれだけ密接的につながっているかという大きな証拠でもあると思う。
”クソをクソと見抜ける” これだけでも簿記会計を学ぶ十分な理由付けになるのではないだろうか…
それだけでもこの動画講義のために3万5千円を払う価値はあると思うし、ぜひともこの本の内容を書籍化して欲しいと私は切に思う
ただ会計なんてものは日本人に本当に本当に馴染みがないものであるし、安価な値段で一般書店に売りに出しても売れにくいであろうということは重々に承知だが、それでも本当に良い内容だと私は思う。
私自身は安富さんの熱狂的なファンということもあり、買った理由は別に会計を学びたいからではなく安富さんの思想がどんな背景で出来てるかという事を知りたいから購入したまでだが、それでも本当にいい勉強にはなったと思う。