というタイトルをつけてはみたものの深い意味があるわけではない。もちろん、これはアルゼンチンの作家、マヌエル・プイグの小説『このページを読む者に永遠の呪いあれ』から剽窃したものだが、この小説にも縁もゆかりもない。
「一月万冊」のブログ第1作記念という考えが頭にあるばかりで、ほとんどアイキャッチだけを念頭に置いて選んだ。
とはいえ「永遠に幸いあれ」という願いにはほとんど同調している。自分自身も含めた自身の関係者にはすべからく「幸い」を願うものであるし、なかんずくぼくのブログをわざわざクリックして中身に目を走らせてくれる方々とぼくとはその内面的志向性においてかなり重なり合うところがあるのだろうと推測されるからだ。
しかし、約10年前に民主党政権が終わり、第2次安倍政権が始まって以来、この人々の内面的志向性はかなり鋭く二極化しているように思われる。
2月8日の動画でも説明したが、その二極化の構造は憲法改正問題をめぐって先鋭化している。二極化の一方は現在の憲法体制を大事に守っていこうと志向する人びとで当然ぼくもその中に含まれる。
二極化のもう一方の極は、非常に簡単に言えば戦前・戦中までの明治憲法を志向する人びとだ。元首相の安倍晋三氏がその代表例だが、自民党に多い二世、三世議員にその傾向が強い。戦後に昭和天皇と天皇制が存続した関係で、戦前からの人脈がごっそり戦後になだれ込んできた。
たとえば岸信介氏がその代表的人物で、岸氏から「英才教育」を受けた安倍氏はその価値観、歴史観を強く引き継いでいるのだろう。
しかし、とすれば改憲を「結党以来の党是」とする自民党にはそもそも改憲を口にする資格がないことになる。日本の戦後の成り立ちは、戦前からの価値観をすべて一掃するポツダム宣言を受け入れたことから始まっているからだ。
急遽日本国憲法を起草することになったGHQ民生局には、日本側から二つの新憲法案が提出された。一つは民間からのもので、当時の憲法学者、鈴木安蔵氏らの新憲法案だ。鈴木氏は憲法学者であるとともに明治以来の自由民権運動の研究者でもあった。
自由民権運動は中江兆民訳のJ・J・ルソーの社会契約論に多大な影響を受けており、鈴木氏らの新憲法案はさらにその強い影響を受けていた。GHQ民生局はこの新憲法案を受け取ると数日で英語に翻訳した。
民生局には米国のニューディーラーの流れを汲む法律学者や弁護士らが集っており、その思想的淵源は米国憲法を通じてやはりルソーだった。つまり、新憲法を考える日本側と米側の人々は、ルソーの思想的な子孫であり、200年ばかりの歳月を経て、太平洋の両岸から運命的結集を果たしたのだった。
米国の歴史家ジョン・ダワーの言い方を借りれば、日本と米国の研究者はまさに「ダンス」を踊っていたのだ。
一方、GHQ民生局に提出されたもう一つの日本案は即日ゴミ箱行きとなった。当時の日本政府の憲法問題調査委員会(通称・松本委員会)が作成したものだったが、簡単に言えば明治憲法の焼き直しだった。
ここまでは動画でも説明したところのものだが、ここで言い残したことをちょっと言っておきたい。
安倍氏ら改憲論者はしばしば「現憲法は米国の押し付けだ」と言うが、決してそうではないということだ。民生局が即座に翻訳して詳細な所見まで起草した鈴木安蔵案は、もう一つの日本の伝統である自由民権運動にその思想的淵源を持つ。
つまり、新憲法の形で戦後に受け継がれた日本の歴史は強権的な明治政府が形作ってきたものではく、ルソーにまで淵源をたどる自由民権運動が形成したものだった。したがって「押し付け」論はあまりに浅薄で一方的な見方だということだ。
これをもう一つ逆に言えば、安倍氏を代表とする現自民党が考えている改憲案は、戦後すぐゴミ箱にポイ捨てされた明治憲法の焼き直し案の一部に過ぎないということだ。
憲法論はまだまだ言い足りないものがあるので、後日また書く機会もあるだろうが、ここでこの一文につけたタイトルの意味が生きてくるような気がする。
このページをここまで読まれた方々の志向性とぼくの志向性はかなり重なっていることだろう。現憲法を通じてルソーや自由民権運動などが志向してきた人類普遍の価値を思う人々には「永遠の幸いあれ」と願うばかりである。
1件のコメント
憲法が安倍晋三から、明治憲法に戻る様な内容は、以前から思って、憲法第9条についても、心に不安がありました。
私が一人発言しても身近に理解者がおりませんでした。安倍晋三の悪事も数々あります。こんな日本に不安でした。
身近な人に私が訳のわからない事を言っているみたいに思われてしまいました。
私は、本当に今先生と出会えた事が嬉しいです!たくさん書きたいのですが、短いしました。
Kindleにも先生の本をたくさん出して欲しいです。YouTubeの解説やらが、本になると思います。
いつか、ご協力出来るような人間になりたいと思います。
『永遠の幸いあれ!』