ピアニストの野島稔が逝去した、という報道を見て、すぐにこれを落札した。実はこの録音のレコードは既に持っている。『松村禎三音楽』に入っていて、そちらを既に入手していた。しかし、ピアノ協奏曲1、2というきれいなカップリングになっておらず、こちらの方が聞きやすそうだったのと、ジャケットがカッコいいので買ったのだ。
『松村禎三の音楽』は、高校生の正月の親戚の集まりに行き、帰りに難波でレコード屋に寄って、これを見つけてしまい、もらったばかりのお年玉を叩いて買ったのである。それゆえ、文字通り、すり減るくらい聴いて、実存的な衝撃を受けた。
丘山万里子「奔出する“一”――作曲家・松村禎三論」は、西欧が二元論で東洋が一元論とかいう、謎の嘘っぱち(なぜならキリスト教は一元論)に依拠してるのは頂けないが、非常に示唆的な論文である。松村禎三が。他力音楽だった、というのは。驚きである。何が驚きかというと、私自身、深い思想的影響をこの演奏から受けたのだが、何を受け取ったのか、自己認識できていなかったからである。高校生の私が、既に他力思想を聴きとっていたのが驚きだったのである。
追記: せっかく気に入ったレコードだったのに、赤ん坊に齧られてしまい、ガッツリ傷がついてしまった。まぁ、赤ちゃんの歯型付きプレミアレコードになった、ということで、、、。作品集に同じの入ってるわけだし、、、。