2020年3月、新型コロナウィルスがアメリカで爆発し始めた頃、私はなぜかオハイオ州のアーミッシュの人々が多く住む Berlin という街に滞在していました。ベルリンではなく英語風にバーリンと発音します。バーリンにたどり着いた日に、オハイオ州のロックダウンが始まっている、というタイミングでした。身動き取れなくなって、日本の学校も閉鎖されていることだし、若い人向けに無料のネット授業でもするか、と思ってYoutubeで「丑三ツ大学」の講座を公開し始めたのですが、ちょうどその頃、「一月万冊」が毎日のように更新され始めました。両者を比べてみると、視聴者の反応も、再生回数も、圧倒的に後者の方が優勢で、結局、こちらに発信の主力を置くようになりました。何が違うのかな、と考えたのですが、決定的なのは、清水さんの視聴者の受け取り方への感性だと思います。私は、「コミュニケーションは受け手がする」というピーター・ドラッカーの大発見の重要性を喧伝する者で、「丑三ツ大学」もそのためにやっているようなものですが、Youtubeの配信に限らず、何事も、自分の頭の中の論理に従って動くため、一方向性が強く、コミュニケーションが成立しなくなってしまうのです。一方、清水さんは、受け手が何を感じているかを察知する異常な能力があります。私の論理の垂れ流しと、清水さんの感性とが合わさることで、フィードバック回路が形成され、視聴者とのコミュニケーションが成立しているのだ、と思います。それから、2年が経過して、今般、遂に「一月万冊」のホームページができました。これによって、さらにコミュニケーションの環が豊かに広がるものと期待しています。
オハイオの街からのはじまり
- 安冨 歩
安冨 歩
Ayumi YASUTOMI / 東京大学東洋文化研究所教授。1963年生まれ。京都大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行勤務。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、現職。
著書に『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『生きる技法』(青灯社)、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』(明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)などがある。『「満洲国」の金融』(創文社)で第40回日経・経済図書文化賞受賞。
他に、Ayumi Yrigoyen の名前で絵画を制作。音楽家片岡祐介と「純セレブ騎士団」を結成し、作曲・演奏・評論活動を展開している。
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このページを読む者に永遠の幸いあれ
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1件のコメント
一月万冊で販売中の安冨先生の書籍や動画を、とてもありがたく拝読、拝聴しています。応援していまーす!