レコードへの道 20220515

リムスキー=コルサコフの『シェーラザード』は、クラシック音楽史上特異なテーマを扱っている。私の考えではベートーヴェンの運命が、支配しようとするハラスメントの暴力、隷従、葛藤、反撃と勝利、を描いたことで、「クラシック音楽」というものが成立し、その文脈に何らかの形で言及し得た作品が、「名曲」として残る、という仕組みになっている。『シェーラザード』は、その暴力を示す「シャフリアール王のテーマ」と、非暴力を表現する「シェーラザードのテーマ」が絡み合いながら、最後に和合する、という構造になっている。このような構造の「名曲」は他にないように思う。

片岡祐介との名曲解説。IWJの有料動画で全体を見ることができる。

私が若い頃に好んで聞いていた『シェーラザード』は、このストコフスキーの名盤である。ストコフスキーの看板である録音技術を駆使した完全に作り込んだ絢爛豪華な音作りである。演奏も、レコードにした時の効果を意識して行われているのではなだろうか。このレコード以外の演奏もいくつか聴いたけれど、ストコフスキー中毒の耳にはもう、物足りないのである。

しかも、これのCDも聞いたけれど、CDだと、なんだかアホくさく聴こえてしまうので、いくらなんでも変な演奏だよなぁ、てか、『シェーラザード』って、繰り返しばっかりで、なんなんだこれは、とか思ってしまうのであった。

やはり、『シェーラザード』は、ストコフスキーのこのカッコいいジャケットのレコードを大音量で聴く以外に、耽溺する方法はないのであった。

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