レコードへの道 20220526

高校生の頃に私は、安部公房と日本の現代音楽の大量摂取をして、それで人格が大きく規定されてしまった。後者で特に好きだったのが、松村禎三と伊福部昭であったが、一曲を挙げろと言われれば、迷わず「リトミカ・オスティナータ」と言っただろう。

FM放送でこの曲を聴いた衝撃は凄まじく、エアチェックしたテープを繰り返し聴いた。特に、深夜にテスト勉強したりしてる時は、これを延々流して忘我の境地に至るのである。こんな名曲の存在を、日本人の大半が知らないとは、なんと嘆かわしいことであろうか。

伊福部昭は、戦前に『ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲』を書いて演奏されていたが、楽譜が失われ、それをもとにして、この曲と、『シンフォニア・タプカーラ』を書いた。後にNHKの書庫からパート譜が発見されて蘇演されている。私はこの中で、『リトミカ』が圧倒的にカッコいいと思っている。

この曲の何にそんなに反応したのか、というと、おそらくは、歪んだ重戦車がどんどん加速していくようなあの疾走感であろう。この感じと、松村禎三のピアノ協奏曲は、よく似てると思うが、こちらの方が本家感がある。

特に面白いのは、七五調に基づくといって、7拍子と5拍子とを繰り返し使うことなのだが、とはいえ日本の七五調は、歌い上げるときには、時々音を伸ばすので、七拍子や五拍子には全くなっていない。なっていないのに、七拍子と五拍子とを繰り返して、あまり日本的ではない轟音の音楽を作り出しておいて、「日本的だ!」と開き直るあたりが、全く日本的でなくて、実にゴジラであって、痛快である。放射能を吐いて何もかも破壊して海に引き上げていくゴジラは、まさに伊福部昭そのものである。この態度に、私は強い思想的影響を受けたように感じている。

また、エンディング直前に、突然の全休止がやってくるのだが、このつんのめるような急停止が、シビれる。なので、かねがね、自分でやってみたいと思っていて、「リヒャルト・シットマウス作曲『ディストピア皇紀2680年に寄せる祝典曲』」を作曲して、片岡祐介指揮でやってみたが、実に痛快であった。この時はウチコミが結構入っていて、ホンモノのオーケストラでいつか聞きたい。パリ在住のメシアンに寵愛された歌手奈良ゆみさんが、絶賛してくださっているのだが。

打楽器は、来客全員の即興演奏

それから、「おっさん姉妹」のために「リトミカおっさんティナータ」という曲を書いて、こちらではもっと全体的に、伊福部昭を真似てみた。

1時間18分あたりから、世界初演。

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