レコードへの道 20220516

これはコンサートではなく、「百万ドル・トリオ」のスタジオ録音である。ピアノがルービンシュタイン、ヴァイオリンがハイフェッツというだけで、もう百万ドル感があるが、チェロのフォイアーマンは、私は知らなかった。解説の藁科雅美が、最初の二人は誰でも知ってるから、フォイアーマンだけ説明する、と書いてることから、知らなくても仕方ないのだろう。

wikiを見たら、11歳でワインガルトナー指揮のウィーンフィンと共演してデビューとある。1934年と38年とに来日して、藁科雅美は生で聴いたらしく「なかば茫然自失した」と書いている。

ナチスを逃れてアメリカに亡命したユダヤ人のフォイアーマンは、wikiによれば、痔の手術の失敗で39歳で急逝したそうで、なんという損失であろうか。「その年代がLPの発明の直前であったのは、レコード・ファンにとってまことの痛恨事であった」と藁科は書いている。

というわけで、1941年の夏のカリフォルニアでのこのレコードに入っている三曲が、「百万ドル・トリオ」の録音の全てである。SPレコードを、LPにどうやって移したのか知らないので、誰かご存知の方は教えていただきたいのだが、どう考えても相当の無理が必要なはずで、それゆえ、残念ながら音は良くないので、最初は演奏の様子がはっきりしなかった。

しかし、聞いているうちに脳が慣れてくるらしく、だんだん像が結ばれてきて、そうすると、この華麗なトリオの中心になっているのが、フォイアーマンのチェロな気がして来た。ナチスによるユダヤ人虐殺と侵略戦争とがなければ、どれほど活躍したことであろうか。本当にすごいチェリストを人類は失ってしまったのだと、猛烈に腹が立ってきた。

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