レコードへの道 20220430

ヘルマン・シェルヘン(Hermann Scherchen、1891-1966年)という指揮者がいた。ヴィオリストで、作曲家でもあったらしい。実は、この人のことを全く知らなかったのだが、フォーレのレクイエムの解説をするために、レクイエムのレコードを買い漁っているときに、安かったのでモーツァルトのレクイエムを落札したら、シェルヘンの指揮であった。そしたら、この解説記事 にある通りのすんごい名演奏で、びっくりしてしまった。それで、少しネットで調べてみると、シェーンベルクらの盟友で、自分でも作曲しており、新ヴィーン派の音楽が、現代音楽の主流になる上で、大きな影響のあった人だと知った。なぜこんな大指揮者を、全然知らなかったのだろう?

そこで、シェルヘンのレコードを探してみたのだが、ソコソコ出回ってはいるけれど、結構お高いので、安いのを見つけては入札している。何枚か聞いただけだが、どれも素晴らしかった。どう素晴らしいのか、無理に言うと、トスカニーニのようなチェリビダッケ、なのだが、何のことかわかるだろうか。テンポは全体に早めで、揺らしたりはほとんどせず、各々の楽器が明確に聴こえて渾然一体とならないが、全体の統一性と一体感は強く、音楽は流れるようではなく、構造物のように感じられるけど、重くはなく、むしろ疾走感が爽快である。

シェルヘン ベートーヴェン交響曲8番

最近入手したこのレコードは、これも、10インチ盤で、その特徴がとても良く現れているし、シェルヘンの指揮と、ベートーヴェンの交響曲8番の凄さがよく合っている気がする。シェルヘンは、ベートーヴェンの指示する速度を忠実に守ってベートーヴェン全集を録音したそうで、そういうことをしたのはシェルヘンがはじめてらしい。ベートーヴェンの交響曲群の中では短く、かつ爽やかなこの曲の中身の濃さが、シェルヘンによって深く掘り返されていて、かつ、心地よい。10インチ盤の長さにピッタリだし、ジャケットのデザインも素晴らしい。

コメントを残す